エピローグ

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 国内交通の総仕上げとして、ニァゥンウーからヤンゴンまで、飛行機で戻ろうと思っていた。アーナンダでナターシャにその話をしたら、あなた、あんな高いものに良く乗るわね、と呆れられてしまった。確かに高いのだ。総予算三百ドルのうち、三分の一を超える金額が必要だった。だが今までの徹底した倹約も、すべてはこの一点豪華主義のフライトのためと言っても良かった。
 宿の主人に相談したら、早速「空港のマネージャー」氏がカブに乗ってやってきて、その場で手書きのチケットを発行してくれた。ステータス欄にはボールペンで小さく"OK"と書かれていた。
 OKか。本当にOKなんだろうな。頼むぜ。

~質素なニァゥンウー空港~

 翌朝七時前に、宿の車で空港に送ってもらった。七時までにチェックインしないと予約は取り消されます、チケットの説明文はそう警告していた。だが軍用機の格納庫のようにおそろしく質素な空港には客はおろか職員すらおらず、私は一抹の不安を覚えずにはいられなかった。乗客が少ないため、本日のフライトはキャンセルされました。もしそんなことになったら、私は日本に帰れない。帰国便は今晩の出発なのだ。
 しかしそれは杞憂に過ぎなかった。七時をしばらく過ぎたころ、怒涛のように人々が押し寄せてきたのだ。ミャンマー人のボーイが大きなスーツケースを次から次へと運び込み、続いてツアー客が涼しい顔でやってくる。あっという間に空港は人でいっぱいになってしまった。短パンをはいて大笑いしている太った白人のグループ、現地添乗員であろうミャンマー人に金切り声を張り上げている日本人のおばさん。
 私は自分が場違いな存在であることを痛感した。小汚いバックパックを背負った者など、私のほかには誰一人としていなかったのだ。ナターシャの感覚は正しかった。

~エアマンダレー~

 ボーディングはなかなか始まらなかった。いったいどうなっているのだろう。
「フライトは遅延されます。ヤンゴンからの到着が遅れているのです」
 私の質問に対し、係員はそう答えた。どれくらい?
「そうですね、一時間くらいです」
 またしてもミシェルの言葉通り、エアマンダレーのプロペラ機は定刻より二時間遅れてニァゥンウー空港を飛び立った。

 私は機上で、今回の旅でアドレスを交換した人の数を数えていた。全部で十一人だった。
 今や明らかなことがあった。私にとって、旅行先が必ずしも観光資源に富む必要はなかった。もしくは、観光地ではないほうが良いと言っても構わないかもしれない。
 私は観光に来ているわけではなかったのだ。違う世界に住む人との出会い、未だ見知らぬ世界の発見。私が旅の中で求めるものはそれだけだった。そして今回の旅で、私は十分な満足を得ることができた。
 私は目を閉じ、遠く日本の景色に思いを馳せた。

 さあ、次はどこへ行こうか。


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